燦太郎の「表現日記」

思っていること、考えていること、本やCDのレビューなどについて毎日書きます。

映画『私が殺したリー・モーガン』を観た!

 

 

 

どうも。燦太郎です。

 

 

 

 

 

 

 

今日はずっと気になっていた映画をようやく鑑賞できました。

タイトルの通り、33歳の若さにして亡くなった天才トランペッター、リー・モーガンと、彼を拳銃で撃ち殺してしまった妻、ヘレン・モーガンにスポットを当てたドキュメンタリー映画『私が殺したリー・モーガン』です。

 

 

 

 

 

 

 

まず感想を一言で述べると、ここ最近観た映画の中では一番のヒットといってもいいほど、とても良い作品でした。

 

 

 

注)ここからはどういったところがよかったのかを私なりに解説していきますので、ネタバレを含みます。まだ観ていない方で、情報を入れずに楽しみたい方はここでストップしてくださいね。

 

 

 

 

 

 

まず、作品の構成が面白かったです。一人の人物に注目するのではなく、リーとヘレン両者の人間像が並行して解き明かされていくというなんとも厚みのある構成。ドキュメンタリーなのですが、2人の人生がそのまましっかりとストーリーになって展開されていき、あっという間の90分でした。

そして、単に彼らの人物像を紹介するだけではなく、運命には抗うことができなかった衝撃的な人間ドラマがそこにあり、見終わった後に悶々と何かが残るこの感じ。本当に実話なのかと思うと、心がぐーっと締め付けられました。

 

 

 

 

 

 

 

さて、ヘレンがライブの休憩中にリーを銃殺したエピソードは有名ですが、この映画を観るまでは、単にリーの女グセの悪さにヘレンが憤慨したのかと思っていました。しかしそんなに単純なものではなく、もっと深い裏側があったのだと知りました。

リーは10代で華々しいデビューを飾りましたが、後に麻薬に取り憑かれ、一時人生のどん底を経験します。そんな時に10歳ほど年上のヘレンと出会い、彼女のサポートによって、リーは奇跡的な回生を見せるのです。

 

 

 

 

 

 

 

私が受けた二人の印象を表すと、まさに「息子」と「母親」。面倒見のいいヘレンは、少年のようなリーに心動かされ、妻として生活を共にしながら、マネージャーとして彼のミュージシャンとしての才能を再び開花させました。その一方でリーも彼女の期待に応えるように、これまでの不真面目さを反省し、熱心に音楽活動に取り組めるようになります。

お互いを必要としている素晴らしい関係だったと仲間のアーティストが賞賛するほど仲のよかった二人。

 

 

 

 

 

 

しかし、リーが別の女友達ととても親密に付き合うようになり、二人の関係に陰りが見え始めます。おそらく、精神的にも体力的にも一人でもやっていけるようになったリーは「親離れ」をしたい時期に差し掛かっていたのではないかと思います。ここでリーがもう少し大人であれば、これまで支えてくれたヘレンに恩返しをするところですが、彼はヘレンの母親のような優しさに甘えてしまうのです。きっと、自分が彼女の元を一回離れても、彼女は自分のことを待っていてくれると思ったのでしょう。

 

 

 

 

 

 

そんなリーの気持ちとは逆に、ヘレンは日々さみしさを募らせます。彼女はリーの世話をしていく中で、自分を彼の中に見出そうとしていきます。つまり、彼がいるから私がいるという状態。ヘレンにとってリーを失うことは、自分自身を失うことと同然だったのです。

これまで主にリーがヘレンの助けを必要としていた関係が、だんだんと逆転して、ヘレンがリーを必要としていく関係に変わっていき、これが最悪の結果を生んでしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

これは単に浮気に対する嫉妬などという言葉では言い表せない感情だと私は思います。個人的には、これまで支えてきたヘレンに対して、リーは少年でありすぎました(彼のまっすぐで勢いのある音は、この少年っぽさからきているのかもしれないと勝手に納得)。ここで、ヘレンが実の母親だったら話は変わってきたでしょう。親はいつか来る子離れを心の何処かで意識しているからです。しかし、ヘレンはあくまでリーの恋人。

彼女はリーを殺した時の自分について、「自分が自分ではないようだった」と語り、深く反省していました。彼女は彼に尽くし切った結果、自分を見失ってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

ヘレンは後に、彼ではなく自分が死ぬべきだったと述べていたようですが、もし彼女が自殺していたら、リーはまた人生のどん底を味わっていたのではないかと思います。

流動的で、常に一定ではないのが人間関係というもの。そのことを痛感しましたし、とても人間味のあるストーリーでした。誰かが決定的に悪いということではなく、それぞれの歯車が噛み合わなくなった瞬間にパッと崩れてしまうなんとも脆い人間同士のつながり。いや〜、非常に興味深いですし、考えさせられるなぁ〜。

 

 

 

 

 

 

と長々と書いてしまいましたが、この辺で留めておきます。本当にオススメの作品です。ストーリー以外でも、当時の貴重な写真やライブ映像、映画館の迫力ある音響で聴くジャズなど、楽しめる要素が満載です。ぜひ劇場に足を運んで見てください!